絵で見る免疫学 基礎編・32
補体(3)
高木 淳
1
,
玉井 一
2
1ダイナボット(株)器機診断薬事業部
2栄光病院
pp.748-749
発行日 2002年8月1日
Published Date 2002/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543906265
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小さい補体断片は炎症反応を誘導する
補体は前躯体蛋白質(C4,C2,C3,C5)から大きい断片と小さい断片との2つの断片が生じる.大きい断片については先に述べた.小さい断片C3a,C4a,C5aは血中で炎症反応の伝達物質を分泌して急性の全身性炎症反応を惹起するので,アナフィラトキシンとも呼ばれる.すべての骨髄系細胞はC3a,C4a,C5aのそれぞれに対するレセプターC3aR,C4aR,C5aRを持っている.
3種類の小さい断片の中で,C5aの作用が最も強く安定性がある.C5aがC5aRに結合すると骨髄系細胞は脱顆粒が誘導される.脱顆粒とは,細胞から細胞質顆粒が消失すること,すなわち顆粒が放出されることである.またC5aがC5aRに結合すると不活性化されるので,これがC5aの生物活性を制御する機構でもある.C5aによって活性化されたマスト細胞はIgEによって刺激されるのと同様に脱顆粒を起こし,ヒスタミン,ロイコトリエンやプロスタグランジンを分泌する(本誌29巻11号).また好中球はリソソームをマクロファージはIL-1,-6を放出する.これらは炎症性伝達物質といわれ,感染局所に食細胞を動員し,また局所の平滑筋の収縮や血管の透過性を亢進し,血管から炎症局所へ組織液,蛋白,細胞成分を導入する.また,活性化した好中球やマクロファージは血管壁への接着が亢進し血管外へと走化し,炎症局所に食細胞が浸潤する.
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