検査じょうほう室 病理:病理標本に見られる不思議な現象
新鮮凍結標本に生じる空胞
冨永 晋
1
,
広井 禎之
1
1防衛医学大学校病理学第1講座
pp.1548-1549
発行日 2000年12月1日
Published Date 2000/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543905688
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はじめに
術中迅速診断用の生検検体が病理検査室へ下りてきて,組織を凍らし薄切,皺も入らず上出来の切片が採れました.しかし,ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色をして顕微鏡下で観てみると,組織には,いわゆるすだれ状の隙間が空いて細胞は収縮し,何の臓器を観ているのかわからない.それほどではなくても,組織内に生じた空胞で細胞が端へ押しやられ,本来の形態と違って見えた.あるいは,細胞質や核内に空胞が生じ封入体様に見られたといった経験をお持ちの方もいらっしゃると思います.
新鮮凍結標本は,術中の迅速診断などに不可欠な手法です.そして,われわれは診断に必要な所見を十分に読み取れる良好な標本をその短い時間内で作製しなければなりません.しかしながら,新鮮凍結標本は,組織凍結によって細胞内に空胞ができやすく,組織凍結の良否が標本の出来を左右します.本稿では新鮮凍結標本作製時に生じる細胞内の空胞について,その発生原因と良好な新鮮凍結切片作製技術について解説します.
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