検査データを考える
ペニシリン耐性肺炎球菌感染症
桑原 正雄
1
,
藤上 良寛
2
1県立広島病院総合診療科/呼吸器内科
2県立広島病院臨床研究検査科細菌室
pp.1435-1440
発行日 2000年11月1日
Published Date 2000/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543905654
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はじめに
肺炎球菌は呼吸器領域や耳鼻科領域感染症の重要な病原菌であり,急性気管支炎,急性肺炎,慢性気道感染症の急性増悪,中耳炎,副鼻腔炎などを引き起こすことで知られている.また,小児科領域では化膿性髄膜炎の起炎菌としても重要で,インフルエンザ菌とともに高頻度に見られる.
肺炎球菌は以前からβ-ラクタム剤に高い感受性を示し,耐性化しにくい菌であった.ところが,本菌に対して最も有効とされたペニシリンG(PCG)に対する耐性化が1970年頃から海外で報告され始めた.南アフリカ,スペイン,ハンガリーなどでは早期から耐性株が高頻度に分離され,大きな問題となっていた1).わが国においては,ペニシリン耐性肺炎球菌の出現は1980年代初め頃とされているが,本耐性菌による感染症例の報告は1988年の化膿性髄膜炎が最初であった.最近では明らかに増加しており,臨床的に遷延したり,反復する肺炎球菌感染症では耐性菌を強く疑い,検査を進めることが必要である.
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