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ペニシリン耐性肺炎球菌
溝渕 和久
1
1今西医院
pp.565
発行日 1995年6月15日
Published Date 1995/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414901546
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生体内でのペニシリン耐性肺炎球菌は1943年にSchmidtらにより最初に報告された.それから20年が経過して同様の菌が人から分離された.肺炎球菌のペニシリン耐性は,細菌の遺伝子学的な構造が変化してペニシリン結合蛋白の1つ以上が変化することで生じる.Hotchkissらの研究によると遺伝子学的には高度耐性菌のDNAが感受性菌に移送され,何倍ものペニシリン耐性が獲得された.さらに今日の発達した輸送系と入の移動により,地理的に離れた場所に耐性菌が拡散した.
ペニシリンに対する耐性は,標準培養条件における発育阻止濃度で定義される.阻止濃度が0.1μg/ml以下なら感受性菌,0.1から2μg/m1の間なら中間耐性菌,2μg/ml以上なら高度耐性菌とされる.8μg/mlを超える耐性菌が人から分離されている.抗菌機序が異なる薬剤の3種類以上に耐性が証明された場合,多剤耐性菌と定義される.この種の菌にはバンコマイシンが有用である.ペニシリン耐性菌および多剤耐性菌とも5つの大陸の無症候性キャリアおよび感染患者の双方から分離されている.1989年のスペインにおいては,高度耐性菌は血液から分離された肺炎球菌の20%を占めた.米国では耐性菌は病院で分離される菌の5~10%を占める.これらの事実を考慮すると,重症肺炎球菌感染症に対する従来の経験的な治療は,もはや適切な治療とは言えない.
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