検査データを考える
慢性骨髄性白血病の検査値の動き
高橋 直人
1
1秋田大学医学部第3内科
pp.1343-1346
発行日 2000年10月1日
Published Date 2000/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543905633
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はじめに
慢性骨髄性白血病(chronic myeloid leukemia;CML)は末梢血における好中球系細胞の著増(しばしば数万/μl以上),巨大脾腫,貧血で特徴づけられる疾患である.最初の数年は慢性に経過し,無治療の場合,平均3.5年で急性転化(blastic crisis;BC)する.BC後は治療に抵抗性となり,死の転帰をとる.BC時の白血病細胞形質の解析により,好中球系のみでなく,リンパ球系や赤芽球系,巨核球系の急性転化も報告されている.これはCMLが多能性幹細胞の異常に由来することを示唆しており,白血病化は多能性幹細胞の段階で起こると考えられる.骨髄染色体分析によりCMLの95%以上の症例でフィラデルフィア染色体(Philadelphia染色体;Ph染色体)を認める.Ph染色体とは,第9染色体の長腕と第22染色体の長腕が相互転座することにより生ずる派生22番染色体のことである(図1).この転座により9番染色体上のABL遺伝子と22番染色体上のBCR遺伝子が再構成され,BCR-ABL融合遺伝子が形成される.BCR-ABL融合遺伝子が作る210kDa蛋白は強いチロシンキナーゼ(tyrosine kinase)活性を有し,これがCMLの腫瘍性増殖に本質的な役割を果たしていると考えられている.
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