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パラフィン切片による悪性リンパ腫のマーカー診断
国仲 伸男
1
,
渡司 博幸
1
,
涌井 重勝
1
,
宮内 潤
1
,
藤本 純一郎
2
1国立小児病院研究検査科
2国立小児病院小児医療研究センター病理病態研究部
pp.1122-1126
発行日 1999年8月1日
Published Date 1999/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543903957
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はじめに
悪性リンパ腫は,リンパ組織のリンパ球から発生するさまざまな特徴を持った腫瘍の総称である.大きく非ポジキンリンパ腫とポジキンリンパ腫に分類されるが,各々をさらにその特徴に基づいて細かく分類する試みがなされており,その分類法は近代医学の進歩に伴って大きく変遷してきた.
悪性リンパ腫の診断にあたっては,形態的特徴に加えて腫瘍細胞が発現するマーカー抗原の種類を同定することが重要であるが,その検査方法としては各抗原に特異的な抗体を用いた腫瘍組織の免疫染色が最も一般的に用いられている.この検査方法に用いることができる標本としては,大きく分けて新鮮凍結切片とパラフィン切片があるが,それぞれ長所・短所がある.新鮮凍結切片と比較して,パラフィン切片の場合には標本作製過程で抗原が変性し,本来持っていた抗体との反応性が消失してしまう場合があり,使用できる抗体が限定されてしまう欠点がある.しかし,一方でパラフィンブロックはごく一般的な病理標本の保存法であるとともに,半永久的な保存が可能であるため,過去の症例について随時解析できるという大きな利点がある.さらに近年,パラフィン切片で染色可能な抗体が次々と樹立され普及してきたことや,いったん変性してしまった抗原の抗体との反応性を電子レンジを用いた熱処理によって回復する技術の確立などにより,パラフィン切片を用いたマーカー解析の重要性が増してきた.
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