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IgM型梅毒トレポネーマ抗体検査法とこれからの抗体検査
出口 松夫
1
1大阪大学医学部附属病院臨床検査部
pp.264-266
発行日 1999年3月1日
Published Date 1999/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543903742
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はじめに
従来より,抗体検査による感染症の診断は採血時期の異なる2種類の血清(ペア血清)を用いて行われている.しかし,この方法では診断までに数週間を必要とすることから,単一血清による迅速診断法の開発が望まれていた.
梅毒の血清学的診断法もペア血清を用いて行われてきたが,1968年にScottiらは臍帯血中のIgM型Treponema pallidum(TP)抗体,その翌年にJulianらは成人血中のIgM型TP抗体を梅毒トレポネーマ蛍光抗体吸収〔fluorescent treponemal antibody absorption(FTA-ABS)〕法で測定し,その有用性を報告した.その後も次々とIgM型TP抗体測定法が新たに開発され,梅毒の迅速診断法としての研究がなされてきた.1980年代にはわが国においても詳細な検討が行われ,梅毒病期の推測や治癒判定に有用であるとの報告がなされている.しかし,十分な治療を行ったにもかかわらず,IgM型TP抗体の消失を見ない症例や未治療の早期梅毒においてIgM型TP抗体が検出されない症例なども報告されている.
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