病理検査こぼれ話
捺印細胞診の有用性
吉見 直己
1
1岐阜大学医学部第1病理学教室
pp.180
発行日 1998年6月15日
Published Date 1998/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543903490
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細胞診もできる内科医を目指して,高橋正宜前教授(現SRL研究所・顧問)の病理学教室に入局して早や15年以上が過ぎて,そのまま病理医になってしまった.現在,高橋先生が辞められた後は世間の時流もあり,分子病理学を主体とする実験病理学を行っている身としては,細胞診を始めようとする検査技師のために参考となることを書けとのご依頼は,はなはだ役にたたない可能性のほうが多いかとも思われるが,自分自身が細胞診の勉強を始めたころを思い出してみて,高橋先生が常に言われた次の事柄が,その後の細胞診をみるうえで役だったことを強調したいと思う.
多くの常勤病理医がいる検査室ならば,ルーチンになされていることではあろうが,ぜひ手間を惜しまずやってほしいことは手術材料や剖検材料での捺印細胞診標本を作製して,組織診断と比べることである.剖検のときは体腔液細胞診標本も可能である.なぜ捺印かといえば,確実に細胞診での細胞と組織診での細胞とを対比することが可能であるからである.しかも組織診断を基に細胞診断がなされている現状では,対比による細胞と組織の読みを経験論的に積み上げていくしか道はなく,対比が可能な捺印細胞診は最も効果的な手段である.もちろん,現実の細胞診材料では婦人科材料や喀痰などの剥離性のものが主体であり,捺印細胞像とは異なる点もあるが,少なくとも穿刺細胞診には相通ずる.
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