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心不全における心筋細胞のアポトーシス
小室 一成
1
1東京大学医学部第3内科
pp.699-701
発行日 1997年7月1日
Published Date 1997/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543903195
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はじめに
絶えず収縮と弛緩を繰り返している心臓は大変ダイナミックな臓器であり,外的刺激に対して極めて迅速に反応する.心臓は高血圧などの血行力学的負荷に対して,まず機能的に,次に蛋白合成を亢進させ肥大を形成することにより,形態的に適応する1).高血圧や弁膜症患者に認められる肥大は,単位心筋あたりのストレスを軽減させるための巧妙な適応現象といえる.肥大心においては,一般に拡張能こそ障害されるものの,心臓の収縮能は正常に保たれていることが多い.しかし,血行力学的負荷が非常に高度であったり,また長期間続くと,収縮能もしだいに低下し,いわゆる典型的な心不全という病態を呈してくる.この心肥大から心不全に移行する機序については,長い間循環器領域における最も重要な問題の1つである.従来,虚血によるエネルギー源(ATP)の減少,カテコラミン受容体の減少,心筋の収縮・弛緩に重要な役割を果たしている細胞内Ca2+ハンドリングの異常などが考えられていたが,最近,心筋細胞のアポトーシスが心不全の原因になるのではないかと注目されている.
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