増刊号 輸血検査実践マニュアル
総論
免疫学的反応
細胞性免疫反応
南 陸彦
1
1横浜市立大学医学部寄生虫学教室
pp.70-72
発行日 1997年6月15日
Published Date 1997/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543903103
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はじめに
生体の免疫応答は,抗体による異物の排除を担う液性免疫と,T細胞あるいはマクロファージなどの細胞が主体となって異物を排除する細胞性免疫の2つに分けられる.液性免疫,細胞性免疫の両者とも,T細胞がその誘導あるいは制御において重要な役割を果たしている(図1).特にヘルパーT細胞がそれぞれの免疫応答の誘導に重要な役割を果たしている.近年,ヘルパーT細胞が,産生するサイトカインによって2種類,すなわちTh1およびTh2に分けられることが報告された(図2).Th1は主として細胞性免疫の誘導を行い,Th2は液性免疫を誘導することが明らかとなっている.すなわち細胞性免疫は,Th1によって引き起こされる免疫反応と言い換えることができる.
従来,細胞性免疫は感作された動物由来の血清ではなく,リンパ球によって伝達されることが知られている.遅延型過敏反応,同種免疫反応〔移植片対宿主病(graft versus host disease;GVHD)を含む〕,多くのウイルス,細菌,寄生虫感染に対する防御反応は,主として細胞性免疫によって担われている.マクロファージによる非特異的防御機構は,特に感染防御における初期の反応において重要であり,ウイルス感染防御における細胞障害性T細胞,また遅延型過敏反応を担うCD4T細胞が感染防御などにおいて役割を担っている.
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