増刊号 輸血検査実践マニュアル
総論
免疫学的反応
抗原抗体反応—抗原,抗体,補体とその反応
石川 文雄
1
,
垣内 史堂
1
1東邦大学医学部免疫学教室
pp.64-69
発行日 1997年6月15日
Published Date 1997/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543903102
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抗原
生体はその免疫能によって自己と非自己を区別し,自己以外の成分を積極的の排除しようとする.その際,排除の対象となるのが抗原(アンチゲン;antigen)で,生体内に侵入するとさまざまな免疫応答を引き起こす.この免疫応答を誘導する能力を抗原性(免疫原性)といい,効率的な免疫応答を引き起こすには,通常5〜10kDa以上の分子量を持つ分子であることが必要である.このように免疫応答を誘導できる抗原を完全抗原という.抗原性を欠き,抗体との反応性だけを有する分子を不完全抗原(ハプテン)と呼んでいる.しかし,低分子の不完全抗原でもアルブミンや赤血球などの高分子担体に結合すると抗原性を発揮できるようになる.これをハプテン・キャリア複合体と呼ぶ.
一方,赤血球表面上には抗原性を示す多様な血液型物質が存在し,ABO式をはじめ約254種類以上報告されている.その多くが糖鎖構造であるが,一部Rh式血液型のようにポリペプチド鎖のものもみられる.血液型はその多様性から一卵性双生児でもない限り,すべて同じ血液型の人に巡り会う機会はほとんどない.このように同種内でバラツキを示すものを同種抗原と呼んでいる.
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