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尿中微量アルブミンは糖尿病性腎症の早期マーカーとされ,今日まで何の疑問も持たずに免疫法で広く測定されている.ところが2001年,Comperらは,糖尿病ラット尿中に免疫反応性アルブミンに加え,免疫非反応性アルブミンの2種類のアルブミン(どちらも66kDa)が排泄されていると報告した.トリチウム標識ラット血清アルブミン([3H]-rat serum albumin,[3H]-RSA)を静注したストレプトゾトシン糖尿病ラットの血清と尿とを,ゲル濾過カラムを用いた高速液体クロマトグラフィ(high performance liquid chromatography,HPLC)法とラジオイムノアッセイ(radio immunoassay,RIA)法とを用いて解析し,比較検討を行った研究結果である.HPLC法において,血清中のアルブミンのピークは糖尿病ラット,コントロールラットともにアルブミンスタンダードと同じ位置に出現する.ところが同様に尿を分析すると,コントロールラットの尿中アルブミンはほとんどが低分子側にフラグメント化しているのに対して,糖尿病ラットの尿は低分子側のアルブミンフラグメントピークだけでなく,アルブミンスタンダードと同じ位置にもピークが見られた(図1).HPLC法で測定されたアルブミンピーク(66kDa)の放射活性(radioactivity)から求めたアルブミン濃度と,RIA法から得られたアルブミン濃度とでは違いがみられ,前者のほうが高値であった.HPLC法では免疫反応性アルブミンと非反応性アルブミンとを測定しているのに対して,RIA法では免疫反応性アルブミンのみを測定しているために,この乖離が生じたとしている1).これはヒトの糖尿病患者を用いた研究でも同様の結果が得られており,さらに,このようなアルブミンの変化は血清中では認められないことから,糸球体で濾過された後,尿中に排泄されるまでの間でなんらかの修飾を受けていることが示唆されている2).
またComperらは,アフィニティーカラムにかけた糖尿病患者尿のflow throughつまり,抗アルブミン抗体に反応しない画分をさらにゲル濾過カラムに通し,66kDaのアルブミンピークを分取し,免疫非反応性アルブミンとして精製している.この精製サンプル中には1%以下で他の尿中蛋白質(トランスフェリン,IgG,Tamm Horsfall糖蛋白質,α1アンチトリプシン,α1酸性糖蛋白質)も含まれているが,純度の高いものである3).精製した免疫非反応性アルブミンサンプルをSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(sodium dodecyl sulfate polyacrylamide gel electrophoresis,SDS PAGE)とポリアクリルアミドゲル電気泳動(native PAGE)で解析したところ,native PAGE法では66kDaのところにバンドが認められたが,SDS PAGE法ではアルブミンよりも低分子側に分解した(図2).この結果を受けComperらは,免疫非反応性アルブミンはintactアルブミンの分子量を持ちながら還元作用によってフラグメント化する構造を持っていると報告している3).
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