けんさアラカルト
血中遊離型PSAの測定法
石橋 みどり
1
1慶應義塾大学病院中央検査部
pp.120
発行日 1997年2月1日
Published Date 1997/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543902983
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前立腺特異抗原(prostate specific antigen;PSA)は1979年,Wang MCら1)によって精漿より分離精製された糖蛋白で,前立腺上皮細胞から分泌されるセリンプロテアーゼである.前立腺上皮細胞で生成されたPSAはfree型であるが,血清中のPSAはプロテアーゼインヒビターであるα1-アンチキモトリプシン(α1-antichymotrypsin;ACT)と結合したcomplex型とPSA単独のfree型の2つの存在様式が知られており,その比率はおよそ9:1である.α2-マクログロブリン(α2-macroglobulin)との結合型も存在するが,これは免疫学的測定によって検出することはできない.PSAは前立腺疾患で血中濃度が上昇してくることから,1980年代より前立腺性酸性ホスファターゼ(PAP)とともに前立腺癌(CaP)のマーカーとして測定されるようになった.現在では最も特異性の高いCaPのマーカーとして広く利用されている.しかし,PSAは前立腺肥大症(BPH)を代表とする良性疾患でも血中濃度が上昇する.特に20ng/ml以下の濃度域ではBPHとCaPのオーバーラップが大きく,その鑑別は困難である.total PSAの単独測定よりさらにCaPの測定効率を上げるため,freeまたはcomplex PSAを測定し,totalに対する比率を求める試みが近年盛んに行われている.
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