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はじめに
世界保健機構(World Health Organization,WHO)の「てんかん辞典」では,『てんかんとは種々の成因によってもたらされる慢性の脳疾患で,大脳ニューロンの過剰な発作から由来する反復性の発作を主徴とし,これに変異に富んだ臨床ならびに検査所見表出を伴う』と定義されています.てんかんはさまざまな病因による発作を慢性的に反復する脳の障害といえます1).発作の発現を抑制するためには,難治性てんかんに実施される外科的治療を除いて,ほとんどの症例で抗てんかん薬(薬物)の持続的投与が主流となっています.服用された薬物は,血中や組織で蛋白質と結合した結合型と結合していない遊離型として存在し,薬理効果を示すのは遊離型です2).
薬物と結合する蛋白質はアルブミン,グロブリン,α1酸性糖蛋白質などが知られており,特にアルブミンは多くの薬物と結合し,アルブミン量の変動が遊離型薬物の血中濃度に影響を与えるといわれています.さらに,遊離型薬物の血中濃度に影響を与える因子として薬物間の相互作用があります.てんかんの治療には単剤投与が理想とされていますが,重症なてんかんで発作が増強しているような症例では,単剤投与では発作が抑制されず複数の薬物が投与されます.複剤投与では薬物間の相互作用が起こり,薬物の組み合わせにより血中濃度が増減します.
てんかんの治療薬は種々ありますが,本稿では投与頻度の高いフェニトイン(phenytoin,PHT),カルバマゼピン(carbamazepine,CBZ),バルプロ酸(volproate,VPA)についてアルブミン量および薬物間相互作用が遊離型血中濃度に与える影響について考察しました.
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