けんさアラカルト
体外受精における臨床検査技師の役割
佐藤 和文
1
1聖隷浜松病院臨床検査センター
pp.1096
発行日 1996年12月1日
Published Date 1996/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543902936
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先進国を中心に不妊に悩むカップルが増加している.精子数の減少が知らないうちに進行していたり,晩婚化,少子化,超高齢化,生産年齢人口の割合の低下など人口構成のアンバランスが危惧される.このような中で,近年,畜産繁殖のノウハウを応用して今まで一概に不妊とされていた中での真の不妊限界への挑戦が続けられている.排卵時期に合わせて精液中から良好精子を収集して,腟内に注入して体内での受精→妊娠を試みる人工授精をする.これを繰り返しても妊娠しない人は体外受精の対象となる.
体外受精は卵子を採取し,シャーレの中で媒精(良好精子と混合)して受精させ,成長した胚を子宮へ移植して妊娠を試みるものである.良い卵子を得るための治療と採卵,そして胚を着床しやすくするための治療と胚移植は医師が実施する.その中間部の採取した卵子を培養,良好精子を収集,媒精,受精確認,移植準備などが基本的にエンブリオロジスト(発生学的手法者)としての臨床検査技師に委託される.配偶子を培養し胚を扱うことは,高度で専門的な知識と技術を必要とする.医師をチームリーダーとする相互の信頼関係に基づく機能分担が必要である.信頼関係を築くためには不断の勉強と努力が必要である.雑学(基礎)知識として水,ガラス,温度,pH,培養液,遠心力,照明光,発生,倫理などを勉強する.英語の文献や取り扱い説明書を読み実験を繰り返すことはもとより,できるだけ医師と同じ関連学会へ参加する.
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