増刊号 感染症検査実践マニュアル
Ⅵ.感染症とその検査法
28.サイトメガロウイルス感染症
南嶋 洋一
1
,
峰松 俊夫
1
,
吉田 朱美
2
1宮崎医科大学微生物学教室
2宮崎医科大学実験実習機器センター感染部門
pp.8,227-230
発行日 1996年6月15日
Published Date 1996/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543902783
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■主要疾患と病原体
サイトメガロウイルス(cytomegalovirus;CMV)は,ヘルペスウイルス科のベータヘルペス亜科に分類される,極めてありふれたウイルスであり,日本人成人の90%以上が抗体陽性である.CMVは向汎性のウイルスであり,全身の種々の細胞や組織に感染し,抗体の存在下に持続感染する.CMVの初感染は通常不顕性感染として経過するが,胎児,移植患者,AIDS患者などの易感染性宿主においては,肺炎,網膜炎,消化管潰瘍など,多彩で重篤な感染症を起こしうる.
初感染の後,CMVは既感染者の体内のどこかに潜伏感染(ウイルスゲノムは存在するが,感染性ウイルスは産生されない状態)を起こし,生涯を通して体内に存続する.CMVのゲノムは,ときに種々の要因で再活性化して回帰感染(潜伏していたウイルスゲノムからの感染性ウイルスの産生)を起こし,易感染性宿主においては発症(回帰発症)をきたす.特に,妊娠,移植,輸血,悪性腫瘍,免疫不全など細胞性免疫の低下と同種免疫反応が共存するような条件下では,CMVは再活性化しやすく,内因感染によるCMV感染症が成立する.
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