一口メモ
砂場のイヌ・ネコ回虫卵汚染
宇賀 昭二
1
1神戸大学医学部医動物学教室
pp.196
発行日 1996年6月15日
Published Date 1996/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543902774
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われわれの周囲の環境がイヌ回虫やネコ回虫の虫卵によって汚染されているとの報告がある.海外における調査では,庭園やドライブインの休憩所,あるいは幼稚園の運動場などから実際に虫卵が検出されている.これら虫卵は土壌中で長期間生存し続け,本来の宿主であるイヌやネコへの感染を待つが,ヒトが誤って経口摂取した場合にも感染が成立し,重篤な疾患を生じさせる場合がある1).
わが国における汚染の実態はどうであろうか? 調査に先だってわれわれは,土壌からの虫卵の回収方法を検討し,ショ糖液を用いた遠心沈殿浮遊法を開発した2).この方法を用いて砂場(全国の総砂場数約30万か所)の調査を実施した結果,虫卵の汚染率には砂場が設置された地域や環境により差のあることが明らかとなった.全国の10都道府県からの報告をみると,公園砂場のイヌ・ネコ回虫卵による汚染率の平均は36%(13〜83%)であったのに対して,幼稚園や小・中学校の砂場のそれは8%(0〜25%)であった.
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