連載 子どもの心と体をはぐくむ 住まい空間・あそび空間・第6回
砂場のある風景
仙田 満
1
1環境建築家
pp.703-705
発行日 2025年9月1日
Published Date 2025/9/1
DOI https://doi.org/10.34433/ch.0000000990
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砂場との出会い
子どもにとってのあそびは,そのあそび場のもっている要素,樹木だったり,水だったり,そして遊具などの道具等によって大きく影響されます。その関係性を長年研究してきました。遊具というものがどのようなものである必要があるのか,子どものあそび意欲を喚起する遊具や広場の構成はどのようなものでなければならないのかというのが,私の長い間の研究テーマでした。それがあそびやすい空間の構造という7つの条件―循環,シンボル,近道,めまい,変化,広場,ポーラス―という多様な体験要素をもつ遊環構造という空間仮説になっているのですが,それにまったくあてはまらない遊具というのが,砂場という存在です。子どもにとって砂場は楽しみの場です。かつてヨーロッパの子どものあそび環境の研究旅行をしたとき,ドイツのフライブルグの幼稚園で,素晴らしい砂場に出会いました。各保育室の前に砂場があり,そこはしっかりと日陰となるようにパーゴラがかけられていました。私が訪れたのは午後で,すでに子どもたちが帰った後でしたが,そこはまさに生き生きと砂場で造形あそびをしていた直後の様子でした。そのつくりこんだ子どもたちの熱中さが伝わってくるような素晴らしいものでした。私は,その子どもたちの造形力の高さに感動してしまいました。きっと夢中で子どもたちの世界を作り上げていたに違いありません。また日本では,お茶の水女子大学附属幼稚園を訪れたとき,その保育室の前にそれぞれ大きな砂場があるのを発見しました。100年以上前に,すぐれた幼稚園の保育室の前には豊かな砂場が設けられていたのだとつくづく感心しました。

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