報告
弘前市内幼稚園ならびに保育園の砂場のToxocara属線虫卵汚染状況
中村 秀雄
1
,
三田 禮造
1
,
尾崎 俊寛
2
,
神谷 晴夫
2
1弘前大学医学部公衆衛生学教室
2弘前大学医学部寄生虫学教室
pp.510-513
発行日 1997年7月15日
Published Date 1997/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401901727
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本来はヒトを固有宿主としない寄生蠕虫類の幼虫が人体内に取り込まれた場合,幼虫のまま人体内を移行・寄生し,高度の好酸球増加や場合によっては思いもかけない強い臓器障害が引き起こされることがある1).これが幼虫移行症(Larva migrans)といわれるもので,特別な治療法のないものが多く,発症には免疫学的機序も関与しているとされている2).幼虫移行症を引き起こす線虫類には数種類が知られているが3),それらの中でも,犬蛔虫Toxocara Canisまたは猫蛔虫Toxocara catiによるヒトのトキソカラ症は,症例数が少ないとはいえ4),十分な注意を払う必要のある人畜共通寄生虫症である.
最近,犬・猫蛔虫による幼虫移行症の感染源の一つとして公園内の砂場における虫卵汚染が問題になり,注目を集めている4〜6).公園の砂場は,とくに幼・小児の遊び場所としてかけがえのないものであるが,しばしばイヌやネコの糞便によって汚染されており,感染能力のある犬・猫蛔虫卵を含んでいる可能性がある.また,砂場は不特定多数の幅広い年齢層の人々が使用する憩いの場でもあるので,寄生虫や細菌,その他の微生物などに対する衛生面での配慮は重要な問題である.今回,筆者らは弘前市内の幼稚園,保育園の砂場の犬・猫蛔虫による汚染状況を知る目的で調査した.それと同時に,これらの施設関係者が犬・猫蛔虫を含めた砂場の衛生・予防について,どの程度関心を持っているのかについてもアンケート調査を実施したので,その結果も集計した.
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