トピックス
軟部腫瘍と染色体異常
野島 孝之
1
1金沢医科大学病院病理部
pp.476-478
発行日 1996年5月1日
Published Date 1996/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543902698
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はじめに
腫瘍細胞では必ずといってよいほど染色体異常が観察される.染色体異常では切断点にある癌遺伝子や癌関連遺伝子が構造異常を起こすことにより,また,癌抑制遺伝子の欠失により,変異遺伝子が異常発現し細胞が癌化すると考えられている.しかしながら,観察される大部分の染色体異常は非特異的なものが多く,腫瘍形成の初期段階にかかわる特異性を明らかにするためには,多数症例に共通した異常所見の集積が必要である.染色体の変化が発癌機構のどの部分に関与しているかは,造血系腫瘍の一部で明らかにされてきたが,固形腫瘍,特に軟部腫瘍においては解析が遅れていた.その理由は,固形腫瘍の分裂中期細胞の染色体分析は技術的に非常に難しいからであった.近年,染色体分析技術の進歩に伴い軟部腫瘍に特異的な染色体異常が報告され,一部の腫瘍では変異遺伝子の解析がなされている.
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