マスターしよう検査技術
分子生物学的検索に有用な組織標本の保存法
鈴木 宏明
1
,
高橋 文誉
1
,
長嶋 和郎
1
1北海道大学医学部第二病理学講座
pp.451-458
発行日 1996年5月1日
Published Date 1996/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543902690
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はじめに
分子生物学的検索法と一言で言っても研究領域では多種多様な研究方法がすでに用いられており,現在もなお新たな方法の開発が続けられている.一部では悪性リンパ腫におけるPCRを用いた遺伝子再配列の検索など臨床的な応用もなされており,今後さらに多くの分子生物学的検索法が臨床の場で一般化されていくものと考えられる.今回は分子生物学的検索に有用な組織標本の保存法について解説する.有用な保存とは言い換えれば高品質のDNA,RNAおよび蛋白質をいかに保つかということであるが,同時に,目的に応じて保存法を選択していくことが大切である.例えば,RNA解析や一部の形態の保存を必要とする検索法などでは特に注意深く試料を保存しなければならないが,PCRを使ったある種のDNAの検索法などでは必ずしも極めて高品質な試料が必要とされるわけではない.すべての手術標本をやみくもに各種の方法で保存することが可能な施設も限られよう.多様な分子生物学的手法の中で目的を考慮し,各手法に適した保存法を選択しなければならない.
おおむね分子生物学的検索法は組織の構築あるいは細胞形態を残した状態でDNA,RNA,あるいは蛋白質の局在(定量性はあまりない)を検索する方法〔insitu hybridization(ISH)法,免疫組織学的検索法など〕とそれ以外のDNA,RNA,蛋白質を抽出することから始まる定量的および定性的な多くの方法論とに分けることが可能である.
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