オピニオン
データによりいっそうの注意を
内村 英正
1
1杏林大学医学部臨床病理学
pp.316
発行日 1996年4月1日
Published Date 1996/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543902658
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検査データを扱う私たちは精度管理という大変重要な責任を負わされているわけであるが,得られたデータの分析がいかに大切かという実例を示したい.
今から35年ほど前シカゴ大学の小児科医Refetoff博士は甲状腺機能低下症あるいは甲状腺機能正常を思わせる1家系で甲状腺機能検査としてPBI(proteinbound iodine,甲状腺ホルモン濃度を示すもの)が異常に高値を示すという奇妙な成績を得た.彼はbutanol extractable iodine(BEI),131Iレジン摂取率,血清蛋白,コレステロール分析などから確かに得られたPBI,BEIなどは説明困難な高値を示していることが明らかとなり,どのような病態が考えられるか想像をめぐらして得た結論は,特に甲状腺機能低下症を強く疑わせたこの家族の2人の兄妹の甲状腺ホルモンの標的細胞のホルモン受容体に異常があって甲状腺ホルモンに反応しないのだと考えた.いわゆる甲状腺ホルモン不応症(Refetoff症候群)の最初の報告例である.当時そのような病態があるとは想像できなかった時代であり,またホルモン受容体遺伝子解析なども夢のような話であったに違いなかったと思われる.
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