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高血圧の予防のための減塩食品がいろいろと市場に出回っています.減塩しょうゆ,減塩梅干しなどです.高血圧患者さんばかりでなく,食事に注意して健康に長生きしたいという方々が,塩分に注目して生活を送ることは疾病予防のうえでも重要なことです.ところで,この塩分を患者さんたちはどう考えているのでしょうか.「しょっぱいものが好きです」とか「どちらかというと薄口が好きです」という表現で塩分に関する会話が患者さんとの間でなされることが多いと思います.医学的には,高血圧予防のための減塩とは塩化ナトリウムを減らすことです.すなわち,体内に入るナトリウムイオンを減らすのがその目的です.このことを十分に頭に入れて生活指導,栄養指導を行わないといけません.
私が研修医の頃,ある高血圧患者さんの担当になりました.型どおりに「塩分制限」の必要性を中心とした生活・栄養指導を行っていました.入院中には病院の食事にも慣れ,降圧薬も必要がなくなるくらいの軽症高血圧の患者さんでした.病院での味覚に慣れたとはいっても自宅で同じような味覚のものを継続するのはなかなか難しいものです.次第に塩分が増えてくることはしばしば経験することです.この患者さんが外来で血圧があまりに高くなってきたので「塩分制限が守られていませんね.このままだとまた入院するか,薬を始める必要がありそうですね」とお話をしました.すると患者さんは毅然として「塩分制限は守っています.食塩は退院した後言われた量以上は使っていません」とおっしゃいました.「変ですね.ストレスかな? 食事を作るときに前と変わったことは食塩を使わなくなったことだけですか?」と問いかけたところ,「塩がないとやっぱり味があまりしないので,これまではあまり使わなかった味の素で味を調えるようにしました」との答えがありました.これだったのです.味の素は成分名ではグルタミン酸ナトリウムです.ナトリウムイオンの負荷は減るどころかかえって増えていた可能性もあります.それ以来,減塩指導のときには,味の素の話も出し,ナトリウムが入っているものに気をつけなさいという指導内容にしています.
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