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喫煙と肺胞マクロファージ
石原 陽子
1
1東京女子医科大学衛生学公衆衛生学(一)
pp.542-545
発行日 1994年6月1日
Published Date 1994/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543902058
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われわれの体には,外から侵入してくる細菌,ウイルス,自動車の排気ガス,工場の煤煙,たばこ煙など体にとって有害な物質を体内に取り込まないように防御する機構が備わっている.肺胞マクロファージ(PAM)は,吸気に吸い込まれた異物を,深部まで到達しないように最前線で防御する役目を担う.
マクロファージは,骨髄の骨髄球幹細胞から顆粒球/マクロファージ前駆細胞を経て,血液中には単球として放出され,取り込まれた組織中でマクロファージとなる.マクロファージは,その細胞が置かれた環境下で役割や機能が微妙に異なり,分布域により名称が異なる.肺組織で成熟したものはPAMと呼ばれ,常在細胞として気管支肺胞系に存在する.細菌などの異物の殺傷・分解・排除のほかに,変性や老化した細胞の除去,組織の修復,脂質代謝,生理活性物質の分泌,抗原提示などの広範な機能を持ち,大食細胞とか貪食細胞とも呼ばれる.マクロファージの寿命はまだ正確につかめていないが,血流の外で数か月から数年間生き続け,局所で刺激を受けて増殖するといわれる.
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