増刊号 臨床化学実践マニュアル
II.日常検査における異常値への対応
9.腫瘍マーカー
腫瘍マーカー
大倉 久直
1
1国立がんセンター中央病院薬物療法部
pp.164-169
発行日 1993年4月15日
Published Date 1993/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543901523
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■免疫学的検査の問題点
モノクローナル抗体にせよ,免疫抗体にせよ,抗原抗体反応で検出される物質が単一の物質でないことに留意する必要がある.つまり検査試薬に用いている抗体が認識する(結合できる)抗原決定基(エピトープ)構造を持っている分子であれば,残りの分子構造が違っても免疫学的には同じ抗原として認識される.hCGのβ鎖末端を認識する抗体は,hCG分子とhCGのβ鎖,β鎖のフラグメントの一部と反応するが,hCGのα鎖に対する抗体はhCGおよびプロラクチンと反応し,β鎖とは反応しない.
また,CA19-9のモノクローナル抗体NS19-1は2-6シアリルルイスAの糖鎖抗原とだけ反応するが,この糖鎖はCA50,SPan-1,KM01,NCC-ST-272 CA195などのモノクローナル抗体でも検出される.そしてCA50とSPan-1のモノクローナル抗体は側鎖にフコースを持たない2-6シアリルラクトテトラオースとも反応し,CA195はシアル酸を欠いたルイスAとも反応し,KM01はCA19-9とほとんど同じ抗原糖鎖だけを認識する.
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