増刊号 臨床化学実践マニュアル
II.日常検査における異常値への対応
8.ビタミン成分
ビタミン成分
安田 和人
1
1帝京大学医学部臨床病理学教室
pp.158-163
発行日 1993年4月15日
Published Date 1993/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543901522
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はじめに
血液中のビタミン成分の測定は主としてビタミンの欠乏状態,代謝異常の判定を目的として行われる.しかし,そのほかに例えば白血病,肝炎の際に高ビタミンB12血症がみられるなど,それ自体は診断の決め手にはならないが,疾患時に一定の変動がみられる場合に測定が意味を持つことがある.
水溶性ビタミンはビタミンそのもの,または代謝物質が尿中に排泄されるので,それらの24時間排泄量を測定することができるが,当日の食物からの摂取状況の影響を受けやすく,かつ変動幅が大きいため,血中濃度に比べて指標性が低い.しかしビタミンB6が欠乏するとその主要な尿中代謝物質である4-ピリドキシン酸(PIC)の排泄量が減少し,ニコチン酸欠乏ではN1-メチルニコチンアミド(MNA)の尿中排泄量が減少し,いずれも欠乏状態の指標として用いられる.またビタミンB12欠乏の際に尿中排泄量が増加するメチルマロン酸のように,通常は極めて微量しか排泄されないが,ビタミン欠乏の際に起こる代謝異常によって血液中に代謝物質が蓄積され,尿中に大量に排泄されるような場合には診断的価値が高い.葉酸欠乏における尿中ホルムイミノグルタミン酸(FIGlu)の増加も同様である.またビタミンB6欠乏の際に尿中にキサンツレン酸が増加することも知られている.
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