基礎から応用へ
サイクリックAMPとその定量
坂岸 良克
1
1埼玉医大・生化学
pp.28-31
発行日 1975年3月1日
Published Date 1975/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543200728
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臨床化学と生化学は現在それぞれ独自の道をたどっているように見えるが,むしろその関係は往年の物理学と数学の間を思わせるものがある.古典物理学は数学を縦横に利用することによって見事な体系に築き上げられたが,複素数やベクトル,テンソルなどの有向量の概念は逆に物理学から数学に導入されたもので,それが近代数学の進歩に及ぼした寄与は測り知れない.臨床化学も生化学から分かれてヒトの疾患と取り組み生化学の解析法をヒトに当てはめているが,その反面,ヒトに関する知見を次々と捕らえて生化学に影響を与えている.更に分析技法の開発と精度の向上という点では生化学の手法を改善するに当たって少なからず貢献している.
近年,分子生物学の飛躍的発展に伴って生化学の考え方は20年前とまるで変わってしまった.今後の臨床化学も生体物質の定量に加えて,負荷試験や分子レベルでの機能検査を取り上げていかなければならなくなるように思われる.ここではホルモンの働きの伝達をし,赤血球の形の保持に重要な役割を演じているサイクリックヌクレオチドの1つサイクリックAMPについて記してみる.
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