今月の表紙
肝腺腫様過形成内での肝内胆管
中沼 安二
1
1金沢大学医学部第2病理学教室
pp.1148
発行日 1991年12月1日
Published Date 1991/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543900897
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肝内胆管は肝臓を構成する組織成分の1つであり,門脈,動脈とともにグリソン鞘(以下,グ鞘)内に見いだされる.肝細胞で産生された胆汁を肝外胆管(総肝管〜総胆管)へと排泄する導管としての働きが最も重要である.肝内胆管は肝門部を中心に扇状に肝内へと分布し,太さに応じ,肝内大型胆管(肝門部結合織内に存在し,肉眼的に同定が可能で,左右肝管から3次分枝までを含む),隔壁胆管(肝内大型胆管の分枝で大体100μmまでの太さの胆管),小葉間胆管(100μm以下の太さの胆管),細胆管(肝実質に接して存在し,病的肝で著しく増生する)に分類される.隔壁胆管,小葉間胆管と細胆管は顕微鏡下で初めて同定される.肝内胆管系には,解剖学的区分やレベルに対応して,腫瘍を含む多数の固有の疾患あるいは病変が見いだされる.
肝内胆管は,肝動脈枝や門脈枝に伴走して肝内で分布しているので,胆管系の固有の病変以外に,他の肝疾患(脈管性,肝細胞性,腫瘍性)でも肝内胆管系に種々の病変が波及することが多く,種々の病変が肝内胆管にみられる.これらの中で,いくつかの肝腫瘤性病変は特徴的な血行支配を受けており,これに関連して胆管の分布も異なっている.つまり,既存の胆管成分がみられるか否か,あるいはどのような形態の胆管成分が存在するかが,病変の成り立ちの解析や病理診断に大いに役立つ.また腫瘍内での胆汁産生と排泄がどのように行われているのかに関しても興味ある点である.
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