トピックス
悪性リンパ腫と遺伝子
浅野 重之
1
,
若狭 治毅
1
1福島県立医科大学病理学第一講座
pp.652-654
発行日 1991年7月1日
Published Date 1991/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543900766
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悪性リンパ腫はT,Bリンパ球の表現型解析により腫瘍細胞の起源,分化段階がより明確になってきた.また,特異な染色体異常が悪性リンパ腫の組織型にある程度対応することもわかってきた.最近では免疫グロブリン(Ig)遺伝子やT細胞抗原受容体(TCR)遺伝子の再構成を中心とした遺伝子型解析が導入され,悪性リンパ腫の診断,治療,予後を決定するうえで有用なものとなってきた.ここでは誌面の都合上,遺伝子型解析の研究の手始めとなったバーキットリンパ腫(Burkitt lymphoma;BL)の特異的染色体変異と癌関連遺伝子について解説し,他のリンパ腫についても代表例を挙げ,最近の悪性リンパ腫と遺伝子の関係について簡単に説明する.
BLの多くでは第8染色体と第14染色体間の相互転座で,そのほかは第2および第22染色体と第8染色体との間に相互転座がみられている.t(8;14)(q 24;q 32),t(2;8)(p 12;q 24),t(8;22)(q 24:q 11).このようにBLにおける染色体転座はすべて第8染色体が関係し,切断部位(8 q 24)は同一であり,転座する相手側の染色体領域はIgH遺伝子座(14 q 32),L鎖κ遺伝子座(2 p 12),あるいはL鎖λ遺伝子座(22 q 11)である(表).第14染色体では中心側よりCH-VHの順序に並び,転座によりVH領域は第8染色体のq 24に移動する.
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