トピックス
悪性リンパ腫の遺伝子診断
福原 資郎
1
1京都大学医学部第一内科
pp.73-74
発行日 1991年1月1日
Published Date 1991/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543900499
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悪性リンパ腫の腫瘍クローンにみられる染色体の構造異常は,初発変異とこれに付随する続発変異に分けられる.初発変異は疾患特異性をもつものが多く,続発変異は腫瘍の進展と増悪に関係する.悪性リンパ腫における癌関連遺伝子の関与およびその活性化の機構は,腫瘍クローンの特性を規定するこれらの染色体構造異常との関連において研究が進んできた1).
悪性リンパ腫を含むリンパ系腫瘍は,未分化型腫瘍と分化型腫瘍に大別すると,対照的に異なる初発変異をもつ.多くの未分化型または初期分化型腫瘍は,急性リンパ性白血病(ALL)として診断される.分化型腫瘍では,多様な臨床病理診断にかかわらず,リンパ球の分化に伴って発現する機能遺伝子の座位に関連した構造異常が好発する.すなわち,B細胞側腫瘍には,免疫グロブリン(Ig)の重鎖(H)遺伝子の座位である14q32転座を高頻度に認める.T細胞側腫瘍では,T細胞受容体(TCR)遺伝子の座位である7q34-q36(TCRβ)転座や7q15(TCRγ)転座がみられ,最も分化したと考えられる成人T細胞性白血病/リンパ腫(ATLL)や末梢性T細胞リンパ腫では,14q11(TCRα-δ)転座が好発する.これらの染色体転座は,それぞれに位置するリンパ球固有の機能遺伝子と転座の対側染色体上に座位する癌関連遺伝子との結合をもたらす造腫瘍性の初発変異である.
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