検査ファイル
項目●オリゴクローナルバンド
山田 正仁
1
1東京医科歯科大学医学部神経内科
pp.562-563
発行日 1991年6月1日
Published Date 1991/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543900635
- 有料閲覧
- 文献概要
はじめに—オリゴクローナルバンドとは?
多発性硬化症(multiple sclerosis;MS)は,中枢神経系において,多発性に脱髄(髄鞘の脱落)性の病巣を生ずる疾患である.その原因はいまだ不明であるが,脱髄の機序は炎症性であり,中枢神経系における免疫異常に基づくとされている1).
MSや神経系感染症では,脳脊髄液中の免疫グロブリンが増加する.これは髄液中〔脳血液関門(BBB)内〕での抗体産生を反映している.感染症では,感染因子の各種抗原に対する特異的な抗体産生がみられるわけだが,MSにおいても髄液中の免疫グロブリン,特にIgGの質的な異常が見いだされる.これは,MS患者の髄液IgGを電気泳動したとき,ユニークな数本のバンド,すなわちオリゴクローナルバンド(oligoclonal band;OCB)がみられること(oligoclonal banding)として知られている.MSの髄液IgGにみられるOCBは,BBB内で産生されるIgGの多様性に制限があること(oligoclonal IgG)を意味しているが,それがある種の特異的な免疫反応の存在を示唆しているのか否か,などについていまだ不明である2).
Copyright © 1991, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.