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悪性リンパ腫(以下,リンパ腫)の症状・所見はどの診療科においても大変多くの鑑別疾患を有し,診断には目的を絞った検体検査が必須である。しかし診断は,一般診療のなかでありふれた症状・所見からリンパ腫を疑うことから始まる。眼内および眼付属器に生じるリンパ増殖性疾患は眼科領域で扱う腫瘍性病変の半数を占め,その半数がリンパ腫である。大部分はB細胞性非ホジキンリンパ腫であるが,ごくまれにT細胞性リンパ腫もみられる。リンパ腫全体の罹患率はこの20年間でほぼ倍増しており,2022年の推定罹患数は男性19,900人,女性17,200人と本邦の全悪性腫瘍の約3%を占める1)。リンパ腫は血液腫瘍に分類されるために眼部に限った全国統計はないが,眼科領域での発症も増加しているものと推定される。最新のWHO分類(第5版)2)が2022年に発行され,亜分類を含めると80以上に細分類され複雑化しており,疾患概念も拡張している。眼科的に注目すべきは,免疫特権部位大細胞型B細胞リンパ腫の概念である(表1)。この新しい病態は,中枢神経(血液脳関門),網膜硝子体(血液網膜関門)および精巣(血液精巣関門)の原発性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B cell lymphoma:DLBCL)を包括したものであり,それぞれの原発部位内の免疫制御システムによって形成される免疫聖域で発生し,免疫表現型および分子学的特徴が共通している3)~5)。分類には分子生物学的検査,染色体検査,遺伝子検査,EBウイルス(Epstein-Barrウイルス)検査および病変分布などの臨床情報も加味されるようになり,適切に検体採取し提出することも診断技術の重要な要素である。本稿は綜説と銘打っているものの,一般的な成書と一線を画し,眼科臨床においてピットフォールとなり得る事象やまれな例も取り上げ,実践的な知識について紙面を割く。このため,必要があれば成書や日本血液学会編集『造血器腫瘍診療ガイドライン2023年版』の「第Ⅱ章 リンパ腫」6)などを参照いただきたい。
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