検査データを考える
高カルシウム血症—悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症の鑑別診断
本田 聡
1
,
長崎 光一
1
,
山口 建
1
1国立がんセンター研究所細胞増殖因子研究部
pp.67-70
発行日 1991年1月1日
Published Date 1991/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543900496
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悪性腫瘍に随伴する種々の症候のうちで高カルシウム血症はしばしば遭遇するものの一つであり,患者の予後やquality of lifeに悪影響を及ぼす.国立がんセンター病院の集計では,総入院患者の3.5%,進行癌患者に限れば約10%という高頻度で10.6mg/dl以上の高カルシウム血症が認められ,12mg/dlを超えると予後は有意に不良となった1).
悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症は,想定される発症機序により二つの範疇に大別されている.その一つは,高カルシウム血症惹起作用を有する体液性因子が腫瘍組織から産生放出されるというもので,humoral hypercalcemia of malignancy(HHM)と呼ばれている.後述するように,この体液性因子は副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone;PTH)と類似する生物活性をもつ物質が主体と考えられている.もう一つは,広範な骨転移浸潤部局所において骨吸収作用が亢進し,高カルシウム血症が引き起こされるlocal osteolytic hypercalcemia(LOH)である.本稿では高カルシウム血症を伴う悪性腫瘍例の7割以上を占めるといわれるHHMについて,その具体例を挙げ,診断および病態生理を理解するうえで重要と思われる検査上のポイントを述べてみたい.
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