疾患と検査値の推移
高カルシウム血症
木下 祐加
1
,
福本 誠二
1
1東京大学医学部附属病院腎臓・内分泌内科
pp.1002-1006
発行日 2011年10月1日
Published Date 2011/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543103336
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疾患・病態の概説
1.血中カルシウム(Ca)濃度の調節機構
血中Ca濃度は,主に副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone,PTH)と1,25-水酸化ビタミンD[1,25(OH)2D]の作用により,狭い範囲に維持されている.PTHは,PTHとPTH関連蛋白(PTH-related protein,PTHrP)への共通の受容体であるPTH1受容体を介し,骨吸収の亢進,腎近位尿細管での1,25(OH)2D産生の促進,遠位尿細管でのCa再吸収の亢進により血中Ca濃度を上昇させる1)(図1).PTHはまた,近位尿細管でのリン(P)再吸収の抑制から,血中P濃度を低下させる.一方1,25(OH)2Dは,ビタミンD受容体(vitamin D receptor,VDR)を介し,腸管からのCa吸収の促進,遠位尿細管でのCa再吸収の促進,さらに高濃度では骨吸収の促進により,やはり血中Ca濃度を上昇させる.1,25(OH)2Dはまた,腸管P吸収の促進により血中P濃度も上昇させるように作用する.
PTH,1,25(OH)2D,血中Ca濃度の間には,ネガティブフィードバック機構が存在する.血中Ca濃度が上昇すると,副甲状腺細胞の細胞膜上にあるCa感知受容体(calcium-sensing receptor)を介してPTH分泌が抑制されるとともに2),これに伴い1,25(OH)2D産生も抑制され,血中Ca濃度は元に戻ることになる.
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