明日の検査技師に望む
三つの独立と三つの従属
上田 國寛
1
1京都大学医学部臨床検査医学教室
pp.1591
発行日 1990年12月1日
Published Date 1990/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543900461
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今日の医療に占める臨床検査の役割はますます大きくなり,検査に絡む医療費は優に一診療科の枠を超えている.その重要性と貢献度を検査技師諸君が謙虚にも,あるいは迂闊にも過小評価しているように私には思えてならない.臨床検査はもはやパラメディカルではなく,コメディカルであり,時にはほとんどメディカルそのものである.例を細菌感染症にとれば,起炎菌を知らずして医師の与える抗生物質は所詮盲射ちであり,一方,薬剤感受性検査の結果は,医師の投与すべき抗生物質をほぼ決定してしまう.しかし,ルーチンのみこなしておれば(私はこの言葉が嫌いである)大したものだと考えるのも間違いである.患者と病態は千差万別であり,医学が知らない,あるいは医療の手がつけられない領域はまだ無限にある.よりよい医療を目差す戦士の一人として,常に新しい可能性を追求してほしいと思う.以下,私の描く「明日の検査技師」像への具体的処方を述べてみよう.
私の処方は,少々誤解される危険を覚悟の上で標語風にまとめると,「三つの独立と三つの従属」ということになる.すなわち,①医師からの独立 ②キットからの独立 ③ルーチンからの独立 ④患者への従属 ⑤必要性への従属 ⑥不可解への従属である.以下,順に,私の意図するところを説明する.
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