コーヒーブレイク
三つの口
I. S.
pp.369
発行日 1979年5月1日
Published Date 1979/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543201834
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「日本の飲酒を考える」—西川,額田,上野編,医学書院—の中で,佐々木久子氏が,"女性は20歳で味の分かる口を持ち,25歳で酒の飲める口を持ち,30歳で人前でものをしゃべれる口を持て"という教訓を引いて同感の意を表しておられる."他になにか忘れてはいませんか"というご意見もあろうかと思うけれども,それは各人で補ってもらいたい.検査部ではこれら年代の多くの女性との会合(歓迎会,送別会,忘年会,反省会など)で一緒に飲んだり食べたりする機会が多い.日ごろカロリーを摂し,アルコールを控え目にしたいと思っているので,そういう席では自分の口はなるべく動きを少なくし,その代わり女性諸君の口の動きを観察するようにしている.興が乗って,自分の飲食を忘れ,体重と血清中性脂肪のレベルの抑制に役立っているのではないかと思っている.
味の分かる口で思い出すのは,埼玉県の高校の先生の娘さんで,2年ほど,小生の秘書をしてくれた女性のことで,たまたま新橋でカニ料理をご馳走したところ,"私は生まれて初めてカニ料理を食べました."と言ったので,びっくりしたことがあった.当時,彼女は21歳だったと思うが,考えてみれば小生も東北地方小都市の開業医の息子で,父も母も口には無関心,子供のころはデパートの食堂の御子様ランチを最高の料理と考えて育ったし,しゃぶしゃぶ,フグサシなどを最初に口にしたのは40歳前後のことだったと思う.
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