ザ・トレーニング
非定型抗酸菌の同定
束村 道雄
1
1藤田学園保健衛生大学医学部微生物学教室
pp.388-392
発行日 1990年4月1日
Published Date 1990/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543900107
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はじめに
日本の抗酸菌同定の水準は,欧米主要国のレベルよりもかなり低いといわざるをえない.筆者は,月1回くらいの割合で,外国から同定依頼を受けるが,それらの株は外国の研究機関でいちおう同定が行われており,送付されるのは希有の菌種の確認のためである.しかも,彼らの同定は,たいていの場合,当たっており,われわれの役目は同定の追認であることが多い.それに反して,わが国の場合,比較的珍しい菌種の場合,たいていは見当外れのことが多い.間違いの原因は,日本で市販されている簡易同定セットの成績の読み違いにある.これらの同定セットは,Mycobacteriumavium-Mycobacterium in tracellulare complex(MAIcomplex),Mycobacterium kansasii,Mycobacteriumfortuitumくらいの同定がせいぜいで,珍しい菌種の同定には,もっと複雑な検査が必要であることを忘れてはならない.もっとも,簡易同定セットでも,ある程度の習熟をすれば,多くの菌種の同定が可能であるが,そこまで抗酸菌を扱い慣れた人がいないということであろう.
本稿では,どこに間違いが起こりやすいかを,われわれの経験から述べて,正確な同定に至る道順を考えてみたい.
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