技術講座 細菌
抗酸菌の同定法
奥住 捷子
1
1東京大学病院中央検査部
pp.987-990
発行日 1986年8月1日
Published Date 1986/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543203813
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臨床材料から分離される抗酸菌には,ヒト結核症の原因菌として知られている結核菌Mycobacterium tuberculosisとそれ以外の抗酸菌群Atypical mycobacteria(非定型抗酸菌)と呼ばれている一群の菌,および抗酸性の強弱はあるがRhodococcus spp. とNocardia spp. がある.Mycobacterium属に限定しても1980年の"Approved Lists of Bacterial Names"の中では41菌種と2亜種が記載されており,それ以後1985年1月までに追加承認された菌名は14菌種,計55菌種と2亜種もある.培養可能なMycobacteriumの同定だけを考えても,臨床細菌検査室のレベルでは不可能とも思える現状である.
Mycobacteriumの鑑別は,集落の形態や着色状況,発育速度,発育温度域,生化学的性状試験などの組み合わせにより行われる1,8).同定の必要性は,抗酸菌の中に,菌種によってはヒトからヒトへの伝播性のあるものや,抗結核剤に対して感受性のないもの,病原性の強いものなどが含まれ多種多様であることによる.これらのことから菌種名の推定や鑑別の作業は,治療方針決定の一助ともなるもので大切な仕事の一部である.抗酸菌は一般に分離培養に長期間を要するうえに,分離株数も一般細菌ほどは多くないため,日常検査の中でもなんとなく片隅に追いやられている傾向がある.
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