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第2期薬剤耐性対策アクションプランが示す方向性
舘田 一博
1
1東邦大学医学部微生物・感染症学講座
pp.416-418
発行日 2024年4月1日
Published Date 2024/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543209290
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人類への危機として進行する耐性菌問題
COVID-19によるパンデミックの陰で,ゆっくりと,しかし確実に進行しているもう1つのパンデミックがある.サイレント・パンデミックと称される薬剤耐性(antimicrobial resistance:AMR)の問題である.これまでにメチシリン耐性黄色ブドウ球菌,キノロン・セファロスポリン系薬耐性腸内細菌,多剤耐性の緑膿菌・アシネトバクター,バンコマイシン耐性腸球菌,薬剤耐性淋菌,多剤耐性結核菌,マクロライド耐性マイコプラズマなど,臨床上重要な病原体において次から次に耐性菌が出現している.
抗菌薬の不適切な使用が耐性菌の出現を助長することは明らかである.一部の国や地域では,医師の処方箋なしに使用される抗菌薬〔OTC(over the counter)販売:一般用医薬品流通〕が耐性菌の出現と蔓延を加速している.しかし一方で,そのような廉価な抗菌薬により救われる命があることも事実である.抗菌薬は医療以外にも,家畜や水産,環境などの領域でも大量に使用されており,その対策にはワンヘルス(ヒト,動物,環境)の視点が重要となる.耐性菌の問題は医療だけで解決できるものではなく,社会,経済,貧困,環境の問題として考えていかなければならない1).
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