看護の潮 患者に目を向けよう
この書を読んで
これからの歩みの方向と目的を示す
橋本 秀子
1
1淀川キリスト教病院・小児科病棟
pp.26-27
発行日 1966年7月1日
Published Date 1966/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661912793
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「患者に目を向けよう」!医療に従事する者,特に医師・看護婦はたえず患者に目を向けよう,患者中心の医療をしようと努力しているものである。だから「患者に目を向けよう」ということは,何もこと新しいことではなくあたりまえのことなのである。そのあたりまえのことがたやすくできないのである。
看護婦というものは,たえずほんとうの看護を心ゆくまでしてみたいものだと願っているものなのである。看護学生の間は「看護とはこうあるべきだ」「看護はこうしてするものだ」と理想に近い看護教育と実習をしてきた。看護精神は機会あるごとに教えこまれ,患者の心理は学問として学んだ。現実に病室に働くと,教室で学んだ理想的看護とはだいぶへだたりがある。始めは看護改革の夢をもち何とかしようと思うのだが,現実にはいろいろ制約があって思うようにならないことを悟り,あきらめ,毎日のマンネリズムの中にとけこんでしまう。卒業当時の看護に対する情熱は次第にさめ,目前に山積する仕事を遂行していくことに追われて,その日その日を過してしまう。そしてそういう日々の連続がくり返えされて月日がたってしまうのである。満足のいくまでよい看護をしたいという思いは心の隅におき去られ,持っていきどころのない空しい思いを持ちあぐんだまま,年数を重ねてしまうのである。
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