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米国感染症学会(IDSA)による薬剤耐性グラム陰性桿菌感染症治療ガイダンス
薬剤耐性は増悪の一途をたどっており,特に耐性グラム陰性桿菌では耐性グラム陽性球菌と比較して,治療に難渋するケースが多い.渇望されながらも存在してこなかった耐性グラム陰性桿菌に対する治療指針が,2020年に初めて米国感染症学会(Infectious Diseases Society of America:IDSA)から,ガイダンスというかたちで公表された.まず,2020年9月にESBL産生腸内細菌目細菌(extended-spectrum β-lactamase-producing Enterobacterales:ESBL-E),カルバペネム耐性腸内細菌目細菌(carbapenem resistant Enterobacterales:CRE),難治耐性緑膿菌(difficult-to-treat resistance Pseudomonas aeruginosa:DTR-P)の3菌種を対象とした治療ガイダンスが,さらに2021年11月にはAmpC産生腸内細菌目細菌(AmpC-producing Enterobacterales:AmpC-E),カルバペネム耐性Acinetobacter baumannii(carbapenem-resistant Acinetobacter baumannii:CRAB),Stenotrophomonas maltophiliaの3菌種を対象とした治療ガイダンスが公表され,いずれも1年ごとに更新される予定で,すでに2022年3月に1度目の更新がなされている1,2).
このガイダンスを読み解く前に理解しておくべき点が3点ある.1点目は,このガイダンスは起因菌が同定されて感受性判明後の標的治療での第一選択薬および代替薬を提示するものであり,経験的治療での抗菌薬選択や耐性機序および感受性検査法についてはほとんど言及がない点である.2点目は,耐性の分子疫学や利用できる抗菌薬は世界各国で大きな相違があり,推奨事項のなかには日本では活用できない部分もあるという点である.3点目は,GRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation)システムを用いて作成され,エビデンスレベルの格付けを含むようなガイドラインとは異なり,6人の耐性菌治療に精通した感染症専門医による包括的な評価(ただしシステマティックレビューではない)に基づくガイダンスとして公表されている,という点である.
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