Topics 1998
薬剤耐性菌感染症ニューキノロン耐性グラム陰性桿菌
山岸 純一
1
,
井上 松久
2
1大日本製薬(株)創薬研究所
2北里大学医学部微生物学教室
pp.1470-1471
発行日 1998年10月30日
Published Date 1998/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542903913
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近年,優れた特徴を持つニューキノロンが,各種の感染症に広く使用されるに伴い,耐性菌の分離頻度は,施設間で大分異なってきている.グラム陰性桿菌では,緑膿菌,肺炎桿菌,セラチアでキノロン耐性菌が分離されており,特に緑膿菌ではキノロン高度耐性を示す菌株の分離頻度が高く,臨床上問題となっている.キノロン耐性は標的酵素であるDNA gyrase (以下Gyraseと略す)とDNA topoisomerase Ⅳ(以下Topo Ⅳと略す)の変異およびキノロン透過性変異つまり外膜透過障害,薬剤排出ポンプの機能亢進により生じることが知られている.これらのキノロン耐性変異が組み合わさることにより,高度耐性化することが明らかになっている.
大腸菌Gyraseのキノロン耐性変異は,表1に示すごとく,GyrA蛋白の83番目のセリン周辺およびGyrB蛋白の中央部2か所で生じ,これら変異部位は,活性中心,すなわちDNA共有結合部位(122番目のチロシン)近傍に局在することがX線講造解析の結果から明らかになっている.このようなGyrase変異により,Gyrase・DNA複合体に対するキノロンの結合親和性が低下し,キノロン耐性を獲得すると考えられる.また,Topo IVのParC変異部位も, GyrAのキノロン耐性決定領域に対応することから,TopoIVもGyraseの場合と同様のメカニズムにより,キノロンに耐性化すると推測される.また,緑膿菌やその他の細菌においてもGyrAやParCの耐性変異は,大腸菌の場合と類似しており,標的酵素の変異による耐性メカニズムは,広く細菌に共通しているものと思われる.
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