FOCUS
急性膵炎の診断—尿中トリプシノーゲン2
北川 元二
1
1名古屋学芸大学大学院栄養科学研究科
pp.590-593
発行日 2022年6月1日
Published Date 2022/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543208705
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はじめに
急性膵炎の致命率は近年著明に改善しているが,2016年の全国疫学調査では急性膵炎全体で1.8%,重症急性膵炎で6.1%といまだ死亡例が存在していることが大きな課題である.急性膵炎の重症化率・死亡率の改善には,発症早期に診断し治療を開始することが最も重要である.急性膵炎の診療において有効性が明らかになっている早期に実施すべき診療行為を列挙した“Pancreatitis Bundle 2021”では,発症後48時間以内に診断し,重症度に応じたモニタリングを行うことが挙げられている1).腹痛を主訴とする原因疾患は多岐にわたるが,そのなかに急性膵炎が含まれる.血中・尿中膵酵素の値が上昇していれば,急性膵炎を強く疑うことになるが,鑑別診断に苦慮する場合も少なくない.
急性膵炎を迅速・簡便に診断することが可能であり,他の血中膵酵素測定と比較して同等の精度を有する“尿中トリプシノーゲン2”の測定検査が開発され2),わが国でも2020年11月1日より保険適用となった.本稿では,「急性膵炎診療ガイドライン2021」1)を踏まえて,尿中トリプシノーゲン2の測定意義について述べる.
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