書評
高齢不妊診療ハンドブック
菅沼 信彦
1
1京大
pp.525
発行日 2020年5月1日
Published Date 2020/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543207995
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「高齢不妊治療」という臨床現場の最重要問題に答える
近年の不妊治療において,体外受精をはじめとする生殖補助医療技術(ART)が発展し,多くの不妊患者に福音をもたらしていることは周知の事実である.日本においてもART出生児は年間56,617人(2017年)に及び,少産化が進むわが国においては全出生児の17人に1人となっている.しかしながらARTによっても児を得られないカップルが存在する.その主たる原因が「高齢不妊」である.特に女性の加齢による卵子の質的・量的変化は著しく,臨床現場では苦慮する場合も多い.本書は「高齢不妊診療」に焦点を当て,基礎から臨床に至るまであらゆる問題点を考察し,まさに現在の不妊治療に必須な項目が網羅されている.
まずは第1章の「高齢不妊診療のための基礎理論」において,加齢による妊孕性低下のメカニズムが統計を含め詳細に述べられている.一般臨床医にとっては見逃しがちな本質が明解に記載されている.続く第2章では,卵子提供も含む「高齢不妊診療の実際」が具体的に示されており,外来現場でそのまま役に立つ情報が満載である.さらに第3章は,本書の特徴ともいうべき「統合医療的アプローチ」が紹介されている.これまでの不妊治療専門書では,サプリメントなどの解説は僅少であったが,実際に患者さんが服用している場合も多く,その説明に非常に役立つ.また第4章の「ケーススタディ」は,このパートのみを読んでも日々の臨床症例として興味深い.
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