今月の臨床 エイジングと生殖医療
高齢不妊女性治療の工夫―私はこのようにして成功率向上をめざしている
宇津宮 隆史
1
1セント・ルカ産婦人科
pp.1374-1379
発行日 2006年11月10日
Published Date 2006/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101309
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はじめに
近年の生殖医療の特徴の1つに,その進展のめざましさの反面,対象患者年齢の高齢化に伴うさまざまな問題点が増加してきている.われわれ生殖医療を担う者は,その患者と生まれてくる児の両方の健康にも責任を持たねばならない.そのために,なるべくハイ・リスク妊娠を避けるべきであり,特に多胎妊娠は最も注意すべき点の1つである.
しかし,患者年齢の高齢化はすなわちハイ・リスク要因である.要するに,現在の生殖医療は初めからハイ・リスク妊娠を覚悟して行うことが多いのである.当院でもこの14年で挙児希望女性の初診時年齢が2歳上昇した.体外受精患者の平均年齢は37~38歳で,ときには40歳以上ばかりの週もある.そのような加齢者〈ここでは当院の生殖補助医療(assisted reproductive technology : ART)妊娠率の結果から35歳以上を加齢者と呼ぶ〉は妊娠しないことが多いので,何度もチャレンジするために全体のART妊娠率は下がる一方である.エイジングの問題点は提供卵子を用いた研究により1),年齢は子宮に関係なく,純粋に卵子の問題であることが証明されている.このようにARTにおいて加齢患者の問題点は医学的には卵子の質と数に集約され,またそのような妊娠困難と思われる患者への心理的サポートも重要となろう.
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