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増刊号 血液形態アトラス
Ⅱ部 造血器腫瘍以外
9章 赤血球系
11 赤芽球癆(PRCA)
Pure red cell aplasia(PRCA)
丸尾 理恵
1
1東京大学医学部附属病院検査部
pp.1062-1063
発行日 2015年9月15日
Published Date 2015/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543206215
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赤芽球癆(pure red cell aplasia:PRCA)は正球性正色素性貧血と網赤血球の著減および骨髄赤芽球の著減を特徴とする造血器疾患で,赤芽球やその前駆細胞が傷害されることにより貧血を起こす.先天性と後天性があり,前者はDiamond-Blackfan貧血と呼ばれ,赤芽球前駆細胞の欠損あるいは低形成を示す造血障害による貧血である8).約25%にリボソームタンパク質に関連するRPS19遺伝子変異が認められる.後天性は臨床経過により急性と慢性に分けられ,さらに慢性では特発性と続発性に分類される.急性のPRCAとしてよく知られているのはヒトパルボウイルスB19によるもので,ウイルスが赤芽球系前駆細胞の細胞膜に発現するP抗原に結合して感染し,細胞を直接傷害することで発症すると考えられている.その他に,急性では薬剤性のPRCAがある.薬剤性PRCAの原因薬剤としては,フェニトイン,アザチオプリン,イソニアジドなどが知られている.後天性慢性PRCAの病因と発症機序は多様であり,治療方針は病因によって異なるため正確な病因診断が必要となる.続発性では基礎疾患として胸腺腫,大顆粒リンパ球白血病,自己免疫疾患を有するものが多い.
臨床症状は貧血に伴う全身倦怠感,動悸,めまいなどである.その他続発性の場合は基礎疾患に応じた身体所見がみられ,輸血依存の患者では鉄過剰症による症状を伴う.胸腺腫や自己免疫性疾患など基礎疾患があればそれに対する治療も行う.後天性PRCAの診断と治療のためのフローチャートを→図1に示す.
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