Laboratory Practice 〈微生物〉
マラリア感染症の迅速診断—イムノクロマトグラフィー法の特徴と有用性について
石井 利明
1,2
,
吉澤 定子
2,3
,
盛田 俊介
1,4
1東邦大学医療センター大森病院臨床検査部
2東邦大学医学部微生物・感染症学講座
3東邦大学医療センター大森病院感染管理部
4東邦大学医学部臨床検査医学研究室
pp.172-176
発行日 2015年2月1日
Published Date 2015/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543205843
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はじめに
マラリアはハマダラカによって原虫が媒介され,刺咬されることで感染する輸入感染症である.原虫種には熱帯熱(Plasmodium falciparum),三日熱(P. vivax),卵形(P. ovale)および四日熱(P. malariae)の4種類が知られており,これらは熱帯や亜熱帯地域に分布している.近年,海外渡航者が帰国して発症する輸入マラリアが問題となり,その数は世界で年間1〜3万例程度とされている1).一方,わが国におけるマラリア報告数は年間100例を超えた時期もあったが,2007年から現在に至っては50〜70例で推移しており,発症例の多くは熱帯熱マラリアである2).マラリアのなかでも特に熱帯熱マラリアは短期間で重症化し,致死的となる場合があり,早急かつ確実な診断が要求される.現在,わが国においてマラリアの流行はみられないが,海外渡航地域の拡大や移動時間の短縮などによって,国内のあらゆる地域で突発的に発生する可能性が懸念される.
マラリア検査は古典的な顕微鏡検査がgold standardであるが,検査者の熟練度によって診断が左右する.したがって,顕微鏡検査のみならず,その他のマラリア検査を補助的検査として併用することが重要である.
本稿では補助診断の1つとして,近年,感染症診断などで急速に普及しているイムノクロマトグラフィー(immunochromatography:IC)法を測定原理としたマラリア抗原検出キットについて解説する.
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