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紅斑熱リケッチア症
内田 孝宏
1
1徳島大ウイルス学
pp.550-551
発行日 1988年6月1日
Published Date 1988/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543205812
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リケッチアは宿主細胞内でしか増殖できない(偏性細胞寄生性)グラム陰性細菌である.分類上リケッチア属は発疹チフス群,紅斑熱群,つつが虫病群に分けられる.
わが国のリケッチア症にはつつが虫病が古くから知られているが,発疹チフス群の発疹チフスは終戦直後の発生以来まったくなく,発疹熱も近年では発生の報告はない.紅斑熱群のリケッチア症は,最近までわが国には知られていなかった.ロッキー山紅斑熱は南北アメリカ大陸に限られ,ボタン熱(地中海紅斑熱)は地中海沿岸やアフリカにみられ,シベリア・マダニチフスはウラル山脈東部のアジア大陸にあり,ニュージーランド・マダニチフスはオーストラリア大陸に限局している.紅斑熱の媒介節足動物(ベクター)はマダニで,またマダニの体内では病原体は卵にも入り子孫に伝わる(経卵伝播).したがって,マダニは病原体保有動物でもある.ノネズミ,リス,ウサギ,イヌが感染するが,ヒトも感染する.このほか,紅斑熱群にはイエダニをベクターとするリケッチア痘(水痘に似た症状)があり,これは極東および北アメリカ大陸東部にみられた.
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