病気のはなし
動脈硬化症
村井 淳志
1
1京都大学老年科
pp.782-787
発行日 1987年6月1日
Published Date 1987/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543204168
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動脈硬化症とは
年をとるにつれ,すべての人の動脈壁は例外なく肥厚して厚くなり,弾性を失って硬くなる.動脈硬化という名称は元来,このような一般的に認められる老化現象に対して与えられたのである.しかし動脈壁が肥厚して硬くなっても,生理的な老化現象である限り,梗塞を起こしたり出血することは少ない.ところが,動脈の内膜にアテロームを作る粥状硬化症,動脈の中膜に壊死をもたらす細動脈硬化症が合併すると,動脈の内腔を閉塞して梗塞を起こしたり,破裂して出血することになる.これらの動脈病変はしばしば患者を死亡させ臨床的にきわめて重要であるから,生理的な老化現象とは区別して動脈硬化症と呼ぶようになった.すなわち,最初に使用されたような意味ではなく,現在では動脈の疾患名として使用されている.動脈硬化症には粥状硬化症,細動脈硬化症,Monckebergの中膜硬化症の3型があるので,これらを区別して解説する.
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