技術講座 生化学
血中重炭酸の測定法
渭原 博
1
,
豊田 正輝
2
1東邦大学大橋病院検査部
2東邦大学糖尿病内科
pp.801-805
発行日 1987年6月1日
Published Date 1987/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543204174
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重炭酸塩(HCO3-)は代謝性因子として細胞や細胞外液の酸塩基平衡に重要な役割を果たしており,その血中濃度の増加した状態をアルカローシス,また減少した状態をアシドーシスと呼んでいる.すなわち,血中重炭酸濃度が正常上限値30mmol/l以上の値を示したならば代謝性アルカローシス(metabolic alkalosis),また下限値20mmol/l以下ならば代謝性アシドーシス(metabolic acidosis)の存在を疑うことができる.
代謝性アルカローシスを呈する疾患1)には,嘔吐,原発性アルドステロン症,利尿剤・ステロイドホルモンの投与,重炭酸塩の点滴,酢酸やクエン酸塩の摂取などの病的状態が挙げられる.また,代謝性アシドーシスをきたす疾患1)には,糖尿病,飢餓,腎不全,頭部外傷,下痢などの脱水でクロールが増加した場合,血中乳酸濃度の増加,尿細管アシドーシスなどがあるが,特に重炭酸濃度の減少は生命の安全性にかかわり,10mmol/l以下の値はpanic value(死の危険)とされており,注意が必要である2).
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